「ローマ人の物語」などで著名な、塩野七生さんの初期作です。
ルネサンス期に、都市国家ひしめくイタリアの統一を目指した若者
チェーザレ・ボルジアの物語です。
人気コミック「チェーザレ」でも知られていますし、それ以前からなんとなく
「チェーザレ・ボルジア」は目にする耳にする名前でした。
そのチェーザレの軌跡を、至って抑えた表現削ぎ落とした記述で淡々と(と思える)
無駄なく淀みなく書いてあります(こういうの好み、特に歴史ものでは)。
ではありますが、小説っぽい薫りもする。
シンプルに書いてあるのにダイナミック、ドラマティックでさえある。
これは題材そのものの面白さと共に、著者の個性だろうなあと思います。
塩野さんの本はエッセイ「イタリアからの手紙」しか他に読んでいなかったので
これが「個性」なのかどうか、他の本も読んで確かめてみたいところです。
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有名な本なんでしょう、昔から、いつの間にかこの書名は知っていました。
気になり続けてある日読もうと思い立ち、本を購入したのは数年前。
そして読み出して途中で止まってしまったのも数年前。
なんだか合わない気がして、やめてしまったんですねー。
もう一生読まないかも、と何故か思っていたこの本ですが
今回ふと、続きを読み始めてみたら一気に読めた。
本当にあっという間に最後まで行けました。
自分が変わったとかそういう要因は、今回感じません。
ただもう、なんでだか読み終えられちゃったというのが本当のところ。
読み通せちゃったのが示すとおり、読みやすかったし、面白かった。
以前読み終えられなかったのは、確か文章に、合わないものがあったんだと記憶していますが、
今回はそんなものも特に感じませんでした。
むしろわかりやすい。すっきりクリアである。ごてごてしていない。いい。
時は十五世紀末、今言う「ルネッサンス」期。
ローマの枢機卿の「息子」として生まれたチェーザレは、父の法王即位と共に「法王の息子」となります。
一旦は聖職者となるもその後その地位を捨て、統一国家樹立を胸に、戦いの日々に身を投じていきます。
イタリア半島は都市国家林立の世。
各国が領土や勢力拡張を虎視眈々と狙い、その攻防が、戦闘として戦略として、常に火花を散らしていた時代です。
なので、チェーザレの戦いを読んでいると、慣れるまで大変。
人名国名地名合わせて固有名詞は乱れ飛ぶし、関係は複雑怪奇だしで、
新潮文庫版の巻頭地図と首っ引きで、落ち着け落ち着けと自分に言いながら読み進めていました。
おかげで、ある程度のところで、なんとなくわかってくるようになってこれは収穫です。
朧げながら感覚、みたいなものが身についたように思うので、
この頭のうちに、以前から興味のあったイタリア史、西洋史に取り組みたい。
今がチャンス。
思惑、策略があらゆるところで巡らされていて、そこも面白かった。
パズルを解くときの面白さに似ていました。
ロジック、ってところでしょうか。
読んでいるうちに、・・・元気だなあ・・・という気持ちにもなりました。
もう、ものすごくパワフル。
ヨーロッパの建築を見る時にも似たような感想を持つのですが、
やっぱりなんというか、よくぞここまでというか、本当に、
こんな元気どこから、という迫力、重量感、精力。
思い込みかもしれませんが、やっぱり何か、あのへん、すごい。
そして策略あり謀略あり二枚舌あり、因縁あり。
もちろん戦争あり侵略あり、暴力あり。
え、そこ、殺しちゃうの?というところもあれば、そこ“関係”しちゃうの?という箇所もあり。
ああ。元気。
(もちろん日本史にも似たようなことは当然のように起こっているのは聞き知っていますが・・・。)
「生命力」「生きる」ってこれかしら、なんて思わず考えてしまいます。
まあ、「生きる」はこれってこともないでしょうが・・・。
チェーザレの妹ルクレツィアは、なんだかこれもちょっと何かあれだぞ、と思っていたら
どうやら彼女には“噂”“伝説”が存在し、彼女を題材にした美術、小説、映画作品なども多いとか。
どんなものがあるのかな。
主役たるチェーザレについては、その内面よりは行動を主に記した本なので、彼の印象をつくるのは、あくまで読者自身なのかな、という気がしています。
でも一方、本書解説でも触れられていましたが、作者のチェーザレへの思いのようなものは、明らかに感じ取ることができる書だと思います。
他にも、いろんな個人が個性として登場しますし、国家もまた個性的に立ち上がって表現されています。
フィレンチェ、ヴェネツィアなんて、かなり面白い。
そしてなんか、渋い。興味を惹きます。
先述しましたが、少しわかるようになってきた頭の状態になったところで、
イタリア史の本を読んでみようと思っています。
「イタリア」史、通史というのは、例えばローマ史、などと比べて、扱っている本も少なそうだなーとは思っていますが、まずは何か一冊読んでから、個々の国家の歴史に踏み込んでいきたいな。
そして、本書を読んでさらに興味がわいたので、
これは兼ねてから読んでみたかった塩野さんの「海の都の物語」
つまりヴェネツィア史を是非読みたい。
ちらっと書きましたがルクレツィアについての作品も探してみたいし、
同じく登場する女性として、カテリーナ・スフォルツァについては
永井路子さんの「歴史をさわがせた女たち」に記述があったな、とか、
それよりもっとバルトロメア・オルシーニに興味があるな、とか。
ルクレツィアとカテリーナ・スフォルツァについては塩野さんの「ルネサンスの女たち」で扱われているそうなので、そちらも読むべし。
バルトロメア・オルシーニの本って、何かあるのかな。
今から探そうと思います。
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