絶妙。「幕末維新がわかる本 山口市版」
毎年恒例年に二回の山口市(およびそのご近所)の旅、2017年末の巻で見つけたこちらの本。
なんとなくピンと来て買ってみたらこれがかなり良質で面白かった!のでちょっとご紹介しちゃいます。
入手方法が極めて限定的なのでなんですが、もし機会があったら目を通していただくのをオススメできる一冊です。
この本を見掛けたのは、山口市は湯田温泉にある施設「狐の足あと」で足湯を楽しんでいた時のことです。
ちなみにこの「狐の足あと」、モダンな室内から外を見ながら足湯を楽しめる(カフェメニューやお酒も同時に楽しめる)お気に入りの施設。その他にも露天風呂風に作られた屋外(屋根付き)の足湯や、音楽が流れる別棟の足湯の計三種の設備があり、湯田温泉を訪れた時には必ず立ち寄る場所です。
そこの「窓辺の湯(外を見ながらの足湯)」に置いてあった本のうちの一冊がこの「幕末維新がわかる本」。可愛い表紙と作りに、最初は子供さんや若者向けのソフトな本かな~と思っていたのですが、中を見てそうとも言い切れない上にけっこう面白そう。ほしい、と思ったら販売していたのでそのまま購入してきました。
価格税込み500円也。
帰宅して改めて読んでみたところ、これが本当に面白かったのです。
まず感じたのが
「ものすごくよく調べて書かれている本!」
だということでした。
これはページから直接伝わってきた「感覚」ですが、バックボーンがしっかりしているというか、裏付けが感じられるというか、なんとも「本格的な」内容。キッズ向け、ティーン向け、また、観光案内ものに散見されるような、さわりだけというか簡単(すぎ)というか取り敢えずイントロダクションというかそんな本ではありませんでした。
にも関わらず。可愛いイラストと装丁のとおり、文章はとてもやさしく、噛み砕かれています。ですます調とやわらかい文章で、若手向きのような読みやすい文章。ちょっと教科書を思わせるレイアウト(注・自分の時代の教科書です)。このへんはいわゆる「初心者」を意識した印象です。
つまり、本格的な内容をやさしくやわらかく(なりすぎないで)まとめている。このバランスが絶妙なのですね。只者じゃないなあ・・・と思いながら読んでいました。
表紙には、幕末の人物の可愛いカットが掲載されています。本文中にはさらに「幕末人物録」として十三人の人物が描かれています。
このカットは山口市史「史料編」編纂調査委員の女性がお書きになったとのこと。本文も文化交流課市史編纂室職員の女性によるもの。ううむ、恐るべし。
さらに山口市在住のイラストレーターtaecoさんのイラストも可愛いというか一度見たら忘れないというか(「高杉の決起」と「石州口の戦い」がかなり好き)、味があってよいです。菜香亭で見たやつだ!と思ったらそのとおり、2016年秋に山口市の菜香亭で開催された「激動の幕末イラスト展」で展示されたものでした。こういうの、こっそり嬉しいです。ふふふ。
さてこの本、「山口市版」と銘打たれているとおり、いわゆる「長州藩」についての記述が中心です。これはもう間違いのないところです。
どういう意味で「中心」かというと、読んだ印象としてこの本は
「長州藩の、幕末史を書いた本」
でした。
「長州藩は」どうしたこうしたこうなった、という感じ。「幕末維新史」の本というよりは「山口市の(萩市でさえ、ない様子)幕末維新史」の本であろうと思われます。そうですよね。「山口市版」ですから。
もちろん「山口市の幕末維新史」が単独で語られるはずはなく、全国や江戸や京都や他の藩の動きも書かれており、「幕末維新史」として読むこともちゃんとできます。
そして、だからと言って極端に「山口視点」から書かれているということはありません。「山口贔屓」「山口万歳」なところは、むしろ少なく感じられます。
この辺やはりバランスがいいというかクールというか公平というか、そんなところでも好感が持てる本なのですね。
そして「良質」と感じるのもひとつはこの点にかかっていると思うのです。
かように「とてもよく出来ている(上からの言い方になってしまった)」本ですので、ごちゃごちゃした幕末維新史を理解するたすけに大いになりそうです。
今から自分はこの本を頼りに、幕末維新史の図解をA3の紙に書き起こそうとしています。読みながら改めて思っていたのですが、幕末維新史って真剣にややこしいよー。
「尊皇攘夷」なんて本来別物の「尊王」と「攘夷」が一緒になったうえ、それぞれの程度に幅があるし、よって態度にズレが出るし、みんなコロコロ言うこと変えるし、一見しただけでは大混乱です。そこをともかく第一次的にちょっとまとめてみる。この本はそれを手伝ってくれそうです。
この「幕末維新がわかる本」は、湯田温泉の「狐の足あと」をはじめとして、山口市内の十数箇所で取り扱われています。
(市サイトでも通販を受け付けていたのですが、2020年6月時点で完売した由、確認しました。)
他県に住んでいる場合、見掛けやすいのは「狐の足あと」か「菜香亭」かなー。
もともと日本近代史を専攻していたこともあり、個人的に近代史をやるぞやるぞ近代ものの芝居も書くぞと言い続けてはや何年。
2018年は明治維新150年にあたるとかで佐賀県でも博覧会があるそうですし(「肥前さが幕末維新博覧会」サイト)、多分鹿児島でも大河ドラマ関係で盛り上がるし、本や資料も出てきそう。いい機会なんでひとつ自分も今年は幕末維新を「研究」しようかな。と思っています。
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