「オリエント急行の殺人」と「アクロイド殺し」/アガサ・クリスティ

クリスティの作品として「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」をご紹介しようと思ったところ、同じくクリスティ作品「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」が連想されましたので、一緒にご紹介致します。

この二作はある意味「問題作」であり、特に「アクロイド殺し」の方は「フェアかアンフェアか」で物議をかもしている、とよく紹介されている作品です。

個人的には最近読み返して巻末の「解説」を読むまで、「オリエント急行の殺人」も「問題作」だったと思っていませんでした(笑)・・・言われてみればそう、かな?

というわけで今回は「問題」二作のご案内です。
どちらも探偵はエルキュール・ポワロです。

オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)

この作品は映画が特に有名なのではないかと思います。
わたし自身も映画の印象が強く残っている作品です。
テレビドラマになったり、いろんなかたち(CMなど)のモチーフになったりと、クリスティ作品の中でも、取り扱われることの多い作品というイメージがあります。
「そして誰もいなくなった」にもそんなイメージがありますが。

雪に閉じ込められ立ち往生したオリエント急行の車内で、刺殺死体が発見されます。
状況から見て、犯人は同じ車両の乗客であろうと推察されますが、彼らにはいずれもアリバイがありました。

偶然同じ車両に乗り合わせたポワロが、同じく乗っていた、友人である鉄道会社の重役から事件の捜査を依頼されます。
密室状態で捜査手段も限られる中、ポワロは、ひとりひとりと話をしながら、推理を組み立てていきます。

多彩で個性的な乗客たちと、彼らが織りなす人間ドラマ。
この部分の面白さ(ホントに面白いと思います)、豪華さが、たびたび映像化される理由ではないかと思います。
いろんな役者さんを競演させたい気になるの、わかるなあ。

真相に至るポワロの推理の進め方、その行程も大変緻密に考えられています。
実にスキがない、という感じ。
「時間」関係の筋運びに、特にその印象を強くうけました。

ポワロが名探偵である所以のひとつがその「発想力」ではないかと思い始めましたが、この事件でもその発想力、イメージ力が解決のきっかけとなっています。これがヒラメキというものか。

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アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)

地主で金持ちのロジャー・アクロイドの他殺死体が彼の自宅で発見されます。
相続、金銭問題、恐喝など、彼の周囲にはいくつもの問題が潜んでいました。
事件の調査を関係者から依頼されたのが、引退してこの村に引っ越してきたばかりのエルキュール・ポワロ。
ポワロは実に巧妙に、散らばった手がかりを拾い集め、事件の真相を解き明かします。
そしてポワロにより名指しされた「意外な犯人」とは。

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この作品は、推理小説として「フェアかアンフェアか」と物議をかもしていることで特に有名です。

その物議が有名すぎて、たとえばわたしも、この本を読む前に、犯人とそのトリックは知っていました(そういう人多いんじゃないかな)。
実際に本書をちゃんと読むのは実は今回が初めてでした。あんなにクリスティ作品は続けて読んでいたのに、やっぱりつい後回しになってしまっていたのかな。

けれどその内容のせいでこの本を敬遠していたつもりは特になく、今回にしても、本を読みながら、ネタバレされているために却って、ある箇所を読んではニヤリとしたり、おお、ここ、巧く書いているなあとところどころで感心したり、けっこう楽しんで読みました。

全く何にも知らずに本書を読んでいたら、最後でどう思ったろうか・・・と想像してみてもどうもわかりません。やっぱり感じ方はひとそれぞれということでしょう。うわ!やられた!と思うかな?

この「アクロイド」がアンフェアかというと、わたしはそうは思いません。
「大技」だけど、そう来たか、というか、画期的というか、「新しい」発想というか。
そして先程も書きましたが、そのトリックのために、文章に巧妙かつ細心の注意が払われていると思います。
そこも読みどころではないでしょうか。

先程ご紹介した「オリエント急行」についても、言われてみれば、似たような発想が見られます。
それ、あり?って感じでしょうか。
「型破り」。まさにそれかな。

「アクロイド」のラストは別の意味でちょっと驚きました。
そう解決するか、ポワロ。
いいのか。少し怖い。

「アクロイド」の関連書としてこんな本を見つけました。
読むのが大変そうではありますが、こちらもぜひ読んでみたいと思います。

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